消費税の届出書を解説していきます。
シリーズの第1回目は、「課税事業者届出書」・「消費税の納税義務者でなくなった旨の届出書」についてです。
消費税は、改正が入る度に複雑になっていきます。
1つずつ確認していきましょう。
消費税課税事業者届出書
基準期間
内容
その課税期間の基準期間の課税売上高が1,000万円を超えた場合には、その課税期間から消費税の納税義務が発生します。
課税事業者になる場合に、課税事業者届出書を税務署に提出し、こちらに消費税の納税義務がありますよと知らせる届出書です。
用語解説
- 課税期間…法人の場合は、原則「事業年度」を指し、個人事業主の場合は、原則「暦年」を指します。
- 基準期間…法人の場合は、前々事業年度を指し、個人事業主の場合は、前々年を指します。
- 課税売上高…商品の売上やサービスの売上など、消費税がかかる取引の合計額を指します。
法人の場合
法人の場合には、前々事業年度の課税売上高が1,000万円を超えたら当期は消費税を納める義務があります。
個人事業主の場合
個人事業主の場合には、前々年の課税売上高が1,000万円を超えたら今年は消費税を納める義務があります。
[aside]例
当期(第3期:平成29年4月1日~平成30年3月31日)
基準期間(第1期:平成27年4月1日~平成28年3月31日)の課税売上高が1,000万円超。
当期は、「課税事業者」になるため「課税事業届出書」を提出する。 [/aside]
提出期限…提出すべき事由が生じた場合に、速やかに提出する。
[aside]提出のタイミング
上記の例での提出時期は、決算終了時点で第1期の課税売上高が
1,000万円超ということが確定するため、第3期は課税事業者となります。
決算のタイミングで第3期分の課税事業者届出書「基準期間用」を提出することになります。[/aside]
特定期間
内容
基準期間の課税売上高が1,000万円以下であっても、特定期間の課税売上高(注1)が1,000万円を超えた場合には、その課税期間から消費税の納税義務が発生します。
課税事業者になる場合に、課税事業者届出書を税務署に提出し、こちらに消費税の納税義務がありますよと知らせる届出書です。
(注1)課税売上高に代えて、給与の額でも判定することが出来ます。
用語解説
- 特定期間…法人の場合、前期の開始の日から6ヶ月の期間を指し、個人の場合、前年の1月1日から6月30日までの期間を指します。
法人の場合
法人の場合には、前々事業年度の課税売上高が1,000万円以下ですが、前期の開始の日から6ヶ月の期間(前期の上期)の課税売上高が1,000万円を超えたら、当期は消費税を納める義務があります。
個人事業主の場合
個人事業主の場合には、前々年の課税売上高が1,000万円以下ですが、前年の1月1日から6月30日の期間の課税売上高が1,000万円を超えたら、今年は消費税を納める義務があります。
[aside]例
当期(第3期:平成29年4月1日~平成30年3月31日)
基準期間(第1期:平成27年4月1日~平成28年3月31日)の課税売上高が1,000万円以下。
特定期間(第2期:平成28年4月1日~平成28年9月30日)の課税売上高・給与共に1,000万円超。
当期は、「課税事業者」になるため「課税事業届出書」を提出する。[/aside]
提出期限…提出すべき事由が生じた場合に、速やかに提出する。
[aside]提出のタイミング
上記の例での提出時期は、決算終了時点では第1期の課税売上高が
1,000万円以下であり課税事業者には該当しないため、「基準期間用」での提出はありません。
第2期の上半期が終了した段階で、課税売上高・給与共に1,000万円超であることが確定します。
上半期終了以降に第3期分の課税事業者届出書「特定期間用」を提出することになります。[/aside]
特定期間は、課税売上高に代えて給与等で判定することもできる
上記の例では、特定期間の課税売上高と給与共に1,000万円超という前提で作成しています。
では、どちらかが1,000万円以下である場合にはどうなるのでしょうか。
- 特定期間の課税売上高と給与等の両方が1,000万円を超えた場合には、「課税事業者」となります。
- 特定期間の課税売上高が1,000万円超、給与等が1,000万円以下の場合には、「課税事業者」or「免税事業者」を選択することが出来ます。これは、課税売上高に「代えて」給与等でも判定することが出来るため、疑似的に「選択」することが出来ます。
- 特定期間の課税売上高が1,000万円以下、給与等が1,000万円超の場合には、こちらも「2」同様「課税事業者」or「免税事業者」を選択することが出来ます。
消費税の納税義務者でなくなった旨の届出書
内容
基準期間の課税売上高が1,000万円以下になった場合には、消費税の納税義務はなくなります(免税事業者)。
免税事業者になる場合に、消費税の納税義務者でなくなった旨の届出書を税務署に提出し、免税事業者ですよと知らせる届出書です。
[aside]例
当期(第5期:平成30年4月1日~平成31年3月31日)
基準期間(第3期:平成28年4月1日~平成29年3月31日)の課税売上高が1,000万円以下。
当期は、「免税事業者」になるため「消費税の納税義務者でなくなった旨の届出書」を提出する。 [/aside]
提出期限…提出すべき事由が生じた場合に、速やかに提出する。
[aside]提出のタイミング
上記の例での提出時期は、第3期の終了時点で基準期間の課税売上高が1,000万円以下であるため、第5期は免税事業者となります。
よって、第3期の終了時点で第5期分の消費税の納税義務者でなくなった旨の届出書を提出することになります。[/aside]
[aside type=”warning”]第4期の特定期間に注意!
納税義務者でなくなった旨の届出書を第3期終了時点で提出したとしても、第4期の特定期間の課税売上高、給与等共に1,000万円超である場合、第5期は課税事業者となります。[/aside]
まとめ
今回は、消費税課税事業者届出書と消費税の納税義務者でなくなった旨の届出書を確認しました。
消費税は、消費税を払う・払わないの判定(納税義務の判定)がとても重要です。
「課税事業者を選択する場合」などの要素が入ってくると、消費税の納税義務判定はさらに複雑になります。
次回は、「課税事業者を選択する場合」の届出を確認しています。
また、ブログにて「消費税を払う・払わない」という記事を過去に書いています。
こちらも合わせてご覧いただければ幸いです。