会計事務所や税理士との「付き合い方」のイメージは、どのようなものでしょうか。
一般的に、
- 申告書の作成
- 税務相談
- 記帳代行
のように、税金に関するものを「継続的に」、会計事務所や税理士に「頼む」というイメージを持つ方が多いのではないでしょうか。
会計事務所や税理士のスタンスによっては、記帳代行を専門に行っていたりもします。
PCや会計ソフトがなかった時代には、申告書や会計帳簿は手書きで記入、電卓やそろばんで集計・計算を行っていました。
当時であれば、申告書・会計帳簿は税務に詳しくない一般の方にはとても難しいものでした。
ですが、現在ではPCが当たり前になり、会計ソフトも明細の自動取り込みができるようになり、一般の方でもご自身で作れるようになってきました。
そんな時代の、記帳代行をお願いすることのメリット・デメリットをまとめてみました。
記帳代行のメリット・デメリット
個人事業主として開業、会社を設立した場合、本来の営業だけでなく書類の整理や郵送、帳簿の記帳といったバックオフィスの業務も同時に行っていかなければなりません。
普段は営業だけして、決算間際に1年分帳簿を作成し申告書を作成、または税理士に依頼するといった場合もあるでしょう。
売上は、ご自身で請求書を発行したり通帳への入金、現金での回収といったようにある程度把握できるものです。
対して、仕入や日々の経費はどうでしょう。
仕入は、売上と直接対応するので把握している場合もあるかもしれません。
しかし、経費については毎月発生するもの、単発で発生するものなど様々です。
支払期日も請求先の会社によって様々です。
年1回だけの記帳・申告書作成だけだと思ったより利益が出てしまった、思っていたほど利益が出ていなかったなど想定と違う場合が多々あります。
税理士へ記帳から丸投げ(記帳代行)している場合、もっと中身がわからなくなることも。
経理を丸投げすることの2つのメリット
一般的には難しい会計帳簿の作成を税理士へ丸投げした場合のメリットは、
- 本業に集中できる
- 経理を雇うより安上がり
の2つが挙げられます。
本業に集中できる
経理をアウトソーシングする分、本業に割ける時間は大きくなります。
売上を生み出すわけでもない経理に時間を捻出するくらいなら、本業に時間を割いた方が売上を上げることが出来ます。
経理を雇うより安上がり
経理担当者を1人、額面20万円で雇った場合はどうでしょう。
ボーナスや社会保険などを考慮しなくても、20万円×12か月=240万円かかることになります。
自社で経理を1人雇うより、記帳代行をお願いした方が安いと考えられます。
創業期など、売上をどんどん上げていこうという場面・人手不足の場面では、「記帳代行」から税理士へ依頼することは有効な手段かもしれません。
しかし、メリット以上にデメリットが存在します。
経理を丸投げすることの5つデメリット
経理を丸投げすることによるデメリットは、
- 試算表の完成が遅い
- 丸投げをしてもラクにはならない
- 試算表の内容がわからない
- 数字を読めるようにならない
- 記帳代行分、税理士報酬が高くつく
の5つが挙げられます。
試算表の完成が遅い
次のデメリットとも関連しますが、税理士が試算表を作成するためには、元となる「資料」が必要になります。
試算表作成・報告の流れとしては、
- お客様から資料を預かる(通帳のコピー、売上データ、仕入データ、経費の領収書など)
- 会計事務所で入力(不明点があれば連絡、解消し、試算表に反映)
- 会計事務所で月次分析・月次報告書の作成
- お客様へ報告(訪問・メール・郵送・電話など)
という過程になります。
工程が多くなる分、試算表の作成が遅くなる原因が多数存在します。
- お客様からの資料の預かりが遅くなる…今月は忙しくて、、、など様々な要因で遅くなる
- 会計事務所での入力…記帳代行するクライアントを多数抱えている場合には資料の到着順に処理したり、会計事務所の繁忙期と重なると手が回らず遅くなる
- 報告するタイミング…お客様のスケジュールや会計事務所側のスケジュールが合わず報告するタイミングが遅くなる
様々な要因が重なり、遅くなってしまうことがあります。
2ヵ月前の試算表を見ても、すでに過去のデータです。
タイムリーな経営判断が出来なくなります。
決算直前であれば、有効な決算対策ができないことも。
丸投げしても100%手が離れるわけではない
経理を丸投げしても100%手が離れるわけではありません。
会計帳簿を作成するためには、元となる「資料」が必要となります。
丸投げするから資料は、ごそっと段ボールに入れて送ればいいというものでもありません。
会計事務所へ送る資料の中に、未払いの請求書が入っていたり大切な契約書が混ざっていたり。(記帳代行を受けている場合の、会計事務所あるあるです。)
未払いが発生すれば、会社や個人の信用問題にもなってしまいます。
丸投げするから資料はごちゃごちゃでもいい、このような考え方である場合はしっかり整理するように意識しましょう。
また、丸投げしたからといって会計事務所がすぐに試算表を作れるわけではありません。
内容が不明なものは、お客様に確認しなければなりません。
事業が拡大すれば、その分確認項目も増えていきます。
不明点のやり取りが増え、丸投げしたのにも関わらず、結果として時間がとられてしまうことも。
試算表の内容がわからない
試算表は、日々の会計帳簿を集計したものです。
現金で支払ったものは「現金」、インターネット代・スマホ代は「通信費」など。
記帳代行を会計事務所が請け負う場合、内部のオペレーションとして勘定科目(支出の属性)はある程度型にはめて作成します。
大量の記帳代行を請け負う場合には、その方がイレギュラーが発生せず効率がいいからです。
例えば、インターネット料金やスマホ代は「通信費」といったように、勘定科目には昔からの慣習があります。
しかし、お客様によってはインターネット代でも、重要な意味を持つ場合もあります。
その場合には別の勘定科目設けたほうがいい場合も。
丸投げをして単純に試算表が送られてきても、どこに何が集計されているかわからず、経営判断の指標に使えないといったことにもなりかねません。
本当は「仕入」なのに、「消耗品」へ計上されていては、利益率も狂ってきます。(預かった請求書や領収書からは、仕入れなのか消耗品なのかは判断出来ないことも)
数字を読めるようにならない
数字は活用してこそ意味があります。
過去の試算表を見ても、結果こうでしたね、ということになります。
現在、そして未来に生かしていくためには過去の数字を分析し、現状・予算とすり合わせていく必要があります。
しっかりと試算表の数字を把握してこそ、数字が読めるようになっていきます。
色々な指標で分析するより、まずは中身をしっかりわかることが重要です。
記帳代行分、税理士報酬が高くつく
経理を雇わないで税理士へ記帳代行をお願いする方が、費用は安く済みます。
しかし、税理士報酬は記帳代行は別途請求としているところも多くあります。(弊所でも、別オプションとしています。)
税理士報酬を下げたいと考える場合には、記帳代行は自社で行うことをオススメします。
「自社で経理」のハードルを下げるクラウド会計
記帳代行によるメリット・デメリットをお話させていただきました。
とはいえ、自社で経理を行うとなると、簿記の知識が必要・経理を雇う必要がと思われるかもしれません。
少し前までの会計ソフトでは、簿記の知識が必要なものも多くハードルが高かったのも事実です。
今では、MFクラウド会計・確定申告、freee、弥生会計オンラインなどクラウド会計と呼ばれる会計ソフトが出てきました。
クラウド会計の最大の特徴は、通帳のデータ、クレジットカードの明細、売上データ、経費データなどを自動で取り込めるようになったことです。
そのため、簿記の知識がなくても連携さえしっかりできてしまえばある程度の会計帳簿が出来上がります。
まとめ「自社で経理」を始めてみる
丸投げも、時と場合には必要なことも事実です。
ですが、メリット以上にデメリットが多いものです。
丸投げは、自社の数字を出来なくなりオススメをしておりません。
理想は最終的に「自社で経理」ができるようになっていただければいい、と考えております。
そこまでいかなくても、ある程度は「自社で経理」ができた方がいいとも考えております。
まずは売上・仕入・経費をExcelで集計するといったところから始めていただいてもいいでしょう。
数字の感覚を身に付けるのが重要です。
弊所では、クラウド会計の導入や、自計化に向けたサポートも行っております。
お気軽にお問合せ下さい。
《編集後記》
HP上の記事では、ほとんど編集後記は書かないのですが、ブログの宣伝も兼ねて。
ブログの記事でも、記帳代行、クラウド会計の記事を書いています。
クラウド会計も増えてきましたね。
是非、こちらも併せて読んでみてください。
ブログ記事:記帳代行について考えてみる。クラウド会計など。
ブログ記事:クラウド会計ソフトとうまく付き合うために